相談事例

相談事例vol.5

2021年11月30日

Q:共有名義の相続不動産を売却するにあたって、共有物分割訴訟と遺産分割調停のどちらで進めていくのがよいか。

相談の背景

相談者の父母は甥家族と共に実家(父母の共有名義)で暮らしていた。3年前に母が倒れ入院して以来、相談者は母の、甥家族は父の面倒を見ていた。
父が亡くなり相続が発生したが、実家の相続にあたって相談者と甥家族が揉めている。相談者としては実家を売却して現金化し、母の入院費や施設への入居費に充てたいと考えているが、甥家族は今後も実家に住み続けたいとのこと。
実家を売却して現金化したいという相談者の意向を叶えるには、共有物分割訴訟と遺産分割調停のどちらで進めるのがよいか、ご質問させていただきたい。

A:遺産分割調停で共有持分の買い取りという形で折り合いをつけることとなるでしょう。

弁護士の解説

まずは遺産分割調停を行い、お母様の共有持分も含めて売却を目指していきます。
しかし、甥家族がご実家を生活の拠点とされているのであれば、そちらの意向が通る可能性が高いため、お母様の共有持分を買い取ってもらう形で現金化をする方が現実的であると考えられます。
なお、ご両親が実家を共有名義にした経緯や事情によっては共有物分割訴訟ができない可能性もあるためご注意ください。

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相談事例vol.4

2021年10月14日

Q:相続人の1人が拘置所に勾留中の場合の不動産名義変更手続きについて伺いたい。

相談の背景

夫が亡くなり、相続人は妻と子3名の計4名。
三男は拘置所に勾留されており、裁判はまだ始まっていない状態。裁判の判決が出るのには数年もの月日がかかることが予想される。
通常、不動産名義変更の際には遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印の上、印鑑証明書を添付する必要があるが、三男は拘置所に勾留されているため、手配することができない。
この場合の手続きについて伺いたい。

A:勾留中の場合、拇印と拘置所長の奥書証明で対応できる可能性があります。

司法書士の解説

明確な規定が民法等で定まっているわけではありませんが、下記の不動産登記の先例を参考に検討します。

・不動産登記先例(昭和39年2月27日民事甲第423号)

刑務所在監者が登記義務者として印鑑証明書を提出できない場合には、本人の拇印である旨を刑務所長又は刑務支所長が奥書証明した委任状を添付するべきである。

これは、不動産の売主等のいわゆる登記義務者が刑務所在監者の場合の先例となっていますが、これを根拠として法務局に、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書のかわりに「本人の拇印」+「拘置所長の奥書証明」で対応したい旨の登記相談を行った上で、申請を行っていただければと思います。

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相談事例 vol.3

2021年10月14日

Q:父の面倒を見ていた長男の妻への謝礼金を、次男や三男に強制することは可能か。

相談の背景

長男の妻は、被相続人である父の晩年の面倒を見ていた。
長男は、次男と三男に対し、父を世話していたことについての謝礼金を妻へ支払ってもらうことを検討している。この支払について、覚書や契約書等の書面を作成することで強制力を持たせることは可能か。

A:「特別寄与料」を確実に受け取るには、合意書を公正証書にて作成するとよいでしょう。

弁護士の解説

謝礼金は、次男と三男から長男の妻に対する「特別寄与料」という位置づけになります。
既にご存じではあるかと思いますが、特別寄与料とは2019年から導入された新しい制度であり、相続人以外の親族であっても、被相続人に対して特別な寄与をした者は、その貢献が考慮され、相続人に対して特別寄与料を請求できるようになりました。
特別寄与料の支払いに強制力を持たせるためには、長男の妻、次男、三男で協議の上で金額を決定し、合意を得た上で「合意書」を作成するべきです。

この合意書は、強制執行認諾文言付きの公正証書にて作成しておくことで、万一支払われない場合には、次男や三男の財産を差し押さえることが可能です。
また、私文書であっても訴訟を提起し、判決を得た上で差押えをすることができます。

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相談事例vol.2

2021年09月24日

Q:相続財産に青地を含む土地があり、相続登記後に他の相続人が青地の払い下げ請求を行うつもりでいる。払い下げ請求を阻止することは可能かどうか伺いたい。

相談の背景

父が死亡し、相続人は長男(相談者)と次男と三男の3人。相続財産の中に青地が含まれており、青地およびその隣接地を相続人3人で相続することになった。
相談者が主導して相続登記後に青地の払い下げ請求を行うつもりでいるが、三男が勝手に先に払い下げ請求をしてしまわないか心配とのこと。
相続登記前に覚書や何かしらの契約を結んでおけば、三男の青地の払い下げ請求を阻止することはできるか伺いたい。

A: 払い下げ請求自体を阻止することはできないです。

弁護士の解説

三男が青地の払い下げ請求を行わないよう、以下の3点を合意書に記載し署名・押印させるという方法があります。

  1. 払い下げは長男がすること
  2. 三男は払い下げをしないこと
  3. 三男は払い下げ手続きに協力すること

ただし、この3点を記載した合意書を作成したとしても青地の払い下げ自体は行政が関与する手続きですので、三男の払い下げ手続き自体を阻止することはできないでしょう。
その場合、相談者が行使できるのは、三男が合意書どおりに履行しなかったことにより損害を被った場合の賠償請求のみかと思われます。

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相談事例vol.1

2021年09月24日

Q:相続人のもとに底地所有者の代理人弁護士から、未払地代(1,200万円程度)を支払うよう督促の通知が届いた。相続放棄の可否判断についてお伺いしたい。

相談の背景

2年前に父が死亡し、相続人は母と姉と相談者の3人。相続財産は、現在母が住んでいる戸建て(土地は法人名義)のみ。母のもとに、土地所有者である法人の代理人弁護士から12年分の賃料(1,200万円)が未払いであるとの内容証明郵便が送られてきた。
相談者の話では、元々この土地は父の友人の会社名義で、とくに賃貸借契約書を交わすこともなく毎月8万円を現金書留で支払っているだけだったとのこと。のちに別の法人がこの土地を買い取ったが、相続人は所有者が変わったことを知らず、毎月8万円の支払いがその時期を境に滞っていた。
不動産の名義変更や固定資産税の支払いをすでに行っているため、相続放棄の可否判断についてお伺いしたい。

A:不動産の名義変更や固定資産税の支払いをすでに行っていることから処分行為に該当し、例え相続放棄が受理されたとしても、債権者からの異議申し立てにより相続放棄が無効となる可能性が高いです。

弁護士の解説

債権者から請求されている1,200万円に地代以外が含まれているようであれば、その負債については認識していなかったことが合理的であるとみなされ、相続放棄が認められる可能性があります。
しかしながら、すべてが地代だった場合、底地が他人名義であることを認識したうえで毎月8万円の支払いを行っていたわけですから、負債の存在を認識していなかったといえず、相続放棄が認められない可能性があります。
また、不動産の名義変更や固定資産税の支払いをしていなければ、相続財産の処分行為には該当しませんが、今回はこれらの行為をすでに行っているとのことですので、例え相続放棄が受理されたとしても、債権者からの異議申し立てによって相続放棄が無効となる可能性が高いといえます。

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