相談事例

相談事例vol.25

2022年11月10日

Q:戸籍の残っている外国籍相続人の相続手続きはどのように進めますか?

相談の背景

相続人調査の段階で、被相続人の姪がアメリカ在留であることが判明し、その姪の現在戸籍を取得できたことから、当該姪は在アメリカ日本人であると判断し、相続手続きを進めていた。その手続きのなかで、姪に「在留証明書」及び「サイン証明書」の取得を依頼したところ、姪から「既にアメリカ国籍に帰化している」との連絡があった。こうした場合、相続人は日本国籍と外国籍のどちらであるとして相続手続きを進めるべきでしょうか。

A: この場合、相続人はアメリカ国籍として相続手続きを進める必要があります。

弁護士 森田雅也の解説

日本人がアメリカ国籍を取得した場合、日本の国籍法は二重国籍を認めていないため、自動的に日本国籍を喪失します。しかし、日本国籍を喪失した事実が戸籍にも自動で反映されるわけではありません。外国籍取得の事実を戸籍に反映し、除籍とするためには、在外公館又は日本の市区町村役所に「国籍喪失届」を提出する必要があります。
こうした国籍喪失の届出をなんらかの理由で怠っていた場合、今回の相談事例のように、「外国籍に帰化しているのに日本の戸籍に残っている」という状況に至ってしまいます。
しかしながら、上述のように、アメリカ国籍を取得したタイミングで日本国籍を自動的に喪失していますので、現在戸籍に記載があったとしても、国籍がアメリカであることには変わりありません。
なお、相続人がアメリカ国籍の場合、「遺産分割協議書」、「宣誓供述書」、「帰化証明書」、「パスポートの写し」等をご用意の上、現地の公証人に署名してもらうことが必要となります。
 
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
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相談事例vol.24

2022年11月10日

Q:被相続人が外国籍の場合の相続放棄はどのように行うことができますか?

相談の背景

被相続人はグアム州で生まれたが、幼いころに来日して以来、ずっと日本に在住していた在日アメリカ人である。その相続手続に際し、相続人たる子は相続放棄を希望した。被相続人が外国籍である場合の相続放棄の進め方について伺いたい。

A: グアム州の法律(グアム法典)に基づいた相続手続が必要です。

弁護士 森田雅也の解説

法の適用に関する通則法第36条により、相続手続においては、被相続人の本国の相続法が適用されます。準州である場合には、その州の法令に準拠した手続きが必要です。
したがって、今回の相談事例では、グアム州の法律(グアム法典)に基づいて相続手続を進める必要がありますので、相続放棄についてもグアム法典に則って手続きを進めることが原則です。
しかし、相続財産に不動産が含まれる場合、注意が必要です。
日本は、全ての相続財産について被相続人の本国法を基準とする相続統一主義を採っていますが、国によっては、不動産については所在地の国の法律を基準とし、不動産以外の財産については本国法を基準とするという相続分割主義を採るところもあります。
アメリカは相続分割主義を採る国の代表例です。
したがって、放棄する財産に、日本国内所在の被相続人名義の不動産と金融財産が含まれている場合、不動産については日本法が、金融財産についてはアメリカ法(グアム法典)が適用されることになります。
日本法における相続放棄の熟慮期間は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月ですが、グアム法典における熟慮期間は権利が発生してから9カ月以内と定められています。当然、相続放棄に係る必要書類も適用される国の法律によって変わってきますので、被相続人が外国籍である場合には、正確に準拠法を確認し、適用される法律の内容を詳しく調べることが不可欠です。
 
<解説>
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相談事例vol.23

2022年10月13日

Q:被相続人の多額の負債を相続せずに被相続人名義の家屋に住み続ける方法はありますか?

相談の背景

被相続人の相続財産には多額の負債のほか、妻との共有名義である家屋も存在し、妻が現在も生活の拠点としている。被相続人の負債を負担するほどの余裕はないが、自宅不動産に住み続けたいと考えている。どのような方法があるか教えて欲しい。

A: 限定承認をすることで、自宅不動産に対する先買権を行使し、自宅不動産を購入することが可能です。

弁護士 森田雅也の解説

先買権とは、限定承認をした相続人に認められる権利で、相続した不動産が競売にかけられた場合に、その不動産を優先的に購入することができるものです。
限定承認の手続きは「限定承認の申立てと債権者への催告」、「不動産鑑定」、「債権者への弁済・名義変更」に大分されます。ここでは相続人が先買権を行使し、被相続人名義の家屋に住み続けるための「不動産鑑定」の段階でのポイントをお伝えします。
「不動産鑑定」の段階では、具体的には「鑑定人の選任申立」と「不動産鑑定額の入金」が必要となります。
「鑑定人の選任申立」においては、先買権を行使したい理由(今回の相談事例においては「相続財産たる家屋に住み続けたい」旨)を明確に示す必要があります。鑑定人については推薦することが可能ですが、官報公告や催告のための郵送料が経費として相続財産から控除可能なのに対し、鑑定費用は相続人負担となる点に注意が必要です。
不動産鑑定人が選任されると、具体的な不動産鑑定額の査定が始まりますが、この鑑定においては今回の相談事例のような建物のみの鑑定であっても「土地上の家屋」として評価がなされます。したがって、鑑定人による鑑定額が、固定資産税評価額と大幅に異なることもありえます。
さらに、不動産家屋に対する先買権の行使のためには、「不動産鑑定額の入金」の段階で、負債の精算のために鑑定額相当のキャッシュを用意する必要があります。上述のように、この鑑定額相当の金額は固定資産税評価額と大きく異なることもあるため、相続人が十分に準備できるのかが大切になります。
以上のように、不動産鑑定においては、その費用が相続人負担である点、鑑定額が固定資産税評価額とは異なり得る点に注意が必要です。
 
<解説>
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弁護士 森田 雅也
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相談事例vol.22

2022年09月07日

Q:配偶者居住権の消滅に関する課税関係についてお伺いしたい。

相談の背景

相談者は夫が既に死亡しており、配偶者居住権に基づいて自宅で暮らしていたが、無断で増築を行ったため、配偶者居住権を消滅させられてしまった。配偶者居住権の消滅によりどのような課税が発生するか知りたい。

A:消滅に際し、無償で消滅させた場合には居住建物の所有者に贈与税が、対価を受け取っている場合には配偶者(相談者)に譲渡所得税が課せられます。

無断増築により配偶者居住権を消滅させられた場合は、配偶者居住権が無償で消滅していることになりますので、居住建物の所有者に贈与税がかかることとなります。

弁護士 森田雅也の解説

配偶者居住権とは、被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者が、その居住建物につき、全部を無償で居住することのできる権利です。
配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者の死亡までとなりますが、遺産分割協議又は遺言書により期間を定めることも可能です。 
配偶者居住権が配偶者の死亡又は存続期間の満了により消滅した場合は、民法の規定により予定通りに消滅するものにすぎず、相続又は贈与による経済的価値の移転は存在しないと考えられ、相続税又は贈与税は課税されません。
一方で、配偶者居住権は存続期間満了前に消滅させることが可能です。配偶者が配偶者居住権を放棄したり(民法1035条1項)、配偶者と所有者の合意により配偶者居住権を解除することができるほか、配偶者が善良な管理者の注意をもって居住建物を私用収益しなかった場合や、無断で増改築した場合、無断で第三者に使用収益させた場合には、所有者は配偶者居住権を消滅させることができます(民法1032条4項)。

こうした場合、居住建物の所有者は、民法が予定していた期間よりも前に居住建物の使用・収益ができることになります。これにより、配偶者居住権の消滅を契機として、配偶者から居住建物の所有者にその建物を使用・収益する権利が移転して、完全な所有権が回復することになりますが、居住建物の所有者がこれに際し、対価を支払わなかった又は対価が廉価であった場合には、配偶者から居住建物の所有者への贈与があったものとされ、贈与税が課税されます。
 
また、配偶者居住権を、対価を受け取って消滅させた場合、その有償対価を得て消滅させる行為は資産の譲渡と同様の効果を持つとされ、配偶者に対して譲渡所得税が課税されます。

<解説>
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相談事例vol.21

2022年09月07日

Q:信託契約終了に伴う受託者を帰属権利者とする登記について詳しくお伺いしたい

相談の背景

委託者の配偶者を受託者とする家族信託を組成した後、配偶者が亡くなり信託が終了した。信託財産に不動産が含まれていたため、信託契約で定めた帰属権利者に当該不動産を帰属させるための名義変更を行おうとしたところ、受託者個人を帰属権利者とする登記には、所有権移転登記による場合と、受託者の固有財産となった旨の変更登記による場合の2種類存在することがわかった。これらの違いを教えてほしい。

A:移転登記と変更登記では、登記権利者と登記義務者の構成が異なり、その対応は法務局によって異なります。

弁護士 森田雅也の解説

家族信託が終了した場合、清算受託者による手続きを経たうえで、残余財産が信託行為において指定された帰属権利者に帰属します。
信託が終了し、当該信託財産に不動産が含まれる場合には、受託者から帰属権利者への所有権移転登記及び信託抹消登記を申請しなければなりません。

このとき、信託終了時の帰属権利者を受託者個人として定めている場合には、信託財産に属する不動産が受託者個人の固有財産に帰属することとなります。
この場合の登記手続きには、所有権移転及び信託抹消登記による方法と、受託者の固有財産となった旨の変更及び信託抹消登記による方法がありますが、現時点では法務局ごとに運用が異なり、見解も分かれている状況です。

所有権移転及び信託抹消登記による場合は、登記簿上の所有者が受託者になることから、実質受託者が「登記権利者」兼「登記義務者」となり、単独で申請が可能です。
一方で、変更及び信託抹消登記による場合は、権利の変更登記にあたることから、受託者が「登記権利者」、受益者が「登記義務者」として共同申請するという特例が適用されています。そのため、受益者死亡のような本事例では、誰が登記義務者になるのかが問題です。

この点につき、受託者個人が「登記権利者」、受益者相続人が「登記義務者」となるとする法務局もあれば、「帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。」との信託法上の規定から受託者個人が「登記権利者」兼「登記義務者」となるとする法務局も存在します。
いずれにしろ、受託者個人を帰属権利者とする場合の登記手続きについては明確な方針が存在しないため、実際に登記申請を行う場合には、法務局への確認が必要です。

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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