相談事例

相談事例vol.10

2022年01月21日

Q:未成年養子がいる場合の相続について詳しくお伺いしたい。

相談の背景

被相続人の妻は既に亡くなっており、相続人は長男、次男、養子(長男の子)の三人。
養子である長男の子は、未成年者であるため親権者が遺産分割を行うこととなるが養親が亡くなったとしても、当然に親権が実親に復活することはないため、養親である被相続人の死亡後、親権者のいない状態となっている。
このように、未成年の養子に親権者が存在しない場合で且つ実親の一人と遺産分割において利益相反関係がある場合において、どのように遺産分割を進めていけばよいか教えていただきたい。

A:未成年後見人選任の申立てを行うか、死後離縁を行うことをおすすめします。

弁護士 森田雅也の解説

親権者のいない未成年の養子を含む遺産分割を行う場合、2通りの対処方法があります。

1つ目は、未成年後見人選任の申立てを行う方法です。

利益相反関係に無い実親(ここでは未成年者の実親で長男の妻)が未成年後見人に選任されることで、特別代理人の選任が不要となり、長男、次男、未成年後見人(長男の妻)で遺産分割を行うことができる可能性があります。
ただし、未成年後見人の選定には、成年後見人選定と同じくらいの時間と手続きを要してしまいます。
また、今回のような被相続人が孫世代を養子としているケースでは、相続税対策として養子縁組がされていることが多く、すなわち 相続財産額が多額であるケースであるため、第三者が未成年後見人に選任される可能性が高くなるでしょう。

2つ目は、死後離縁を行う方法です。

死後離縁を行うことで、実親に親権が戻ります。
死後離縁を行うには、家庭裁判所に死後離縁の許可申立てを行う必要がありますが、手続き自体はとても簡単です。
また、すでに生じた相続における相続人の地位は、死後離縁によって影響を受けることはないため、長男の子が被相続人と離縁したとしても、長男の子の相続人としての地位は失われません。
ただし、未成年者の実親(ここでは長男)が遺産分割をする相続人の中に含まれており、未成年者と実親のひとりが利益相反関係にあるため、 死後離縁の許可申立てとあわせて特別代理人選任の申立てを行う必要があります。 
死後離縁を行った場合の遺産分割は、長男、次男、長男の妻(親権者)、特別代理人で行うことになります。
親権者は両名で未成年者を代理する必要があり、利益相反に無い親権者のみで未成年者を代理することはできないため、長男にかわる特別代理人と、長男の妻(親権者のひとり)とで共同して未成年者を代理することになります。

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.9

2022年01月21日

Q:死後離縁許可の申立てを行う際の手続きについてお伺いしたい。

相談の背景

被相続人は、相談者の母であり、被相続人の夫は既に死亡している。
被相続人は相続する際の相続税回避を目的として、相談者の子(15歳以上の未成年)と養子縁組をしていた。
未成年者が養子縁組を行った場合、養親の親権に服することになり、実親の親権が喪失するが、養親の死亡により当然に実親の親権が回復することはないため 、被相続人死亡後、相談者の子は親権者がいない状態になっている。
相談者の子は未成年で遺産分割協議に参加することができないため、被相続人と死後離縁し、実親の親権を復活させた上で遺産分割協議に参加してもらいたい。
そのために死後離縁を行いたいのだが、手続きについて詳しく伺いたい。

A:死後離縁許可申立ては、2~3ヶ月程度の手続きとなります。

弁護士 森田雅也の解説

まず前提として、すでに生じた相続における相続人の地位は,死後離縁によって影響を受けることはありません。

そのため、相続人が被相続人と死後離縁し、実親である相続人の親権を復活させた上で遺産分割協議に参加することが可能ですので、以下、死後離縁の手続について説明します。
申立人の住所地を管轄する家庭裁判所にて申立てを行います。

死後離縁の許可申立ての手続き完了までの期間は下記の通りです。

  1. 家庭裁判所にて死後離縁許可の申立て
    ↓ 2~3週間程度
  2. 照会書の到着・送付
    ↓ 1ヶ月程度 ※裁判所によっては審問を行う場合もあります
  3. 審判書謄本の到着・審判確定証明書の申請の送付
    ↓ 2~3週間程度
  4. 審判確定証明書の到着
  5. 役所へ審判書謄本と審判確定証明書の届出

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.8

2021年12月23日

Q:賃貸住宅で借主が孤独死(病死)した場合の連帯保証人の損害賠償の対象についてお伺いしたい。

相談の背景

相談者の兄弟が賃貸住宅で孤独死し、明確な死因は不明だが、病死という診断書がでた。相談者は被相続人自宅の賃貸アパートの連帯保証人だったため特殊清掃・残置物の撤去は連帯保証人の立場として業者へ依頼し、既に済んでいる。
汚れた部分の原状復帰を行う段階で、不動産管理会社より「以降この部屋は告知事項を出して貸しに出さないといけないため、減額せざるを得ない家賃を補填する月1万円×24か月分を払って欲しい。合意書も現在準備している」と言われてしまった。
告知事項を出す要因が、故意・過失に依るものであれば支払いの対象としても考え得るように思えるが、事故死・病死がそこに該当するのか、意見をお伺いしたい。

A:特殊清掃代の支払い義務は負うとしても、心理的瑕疵物件になったことにともなう賃料の減額分の賠償(逸失利益の賠償)までは義務がない可能性が高いのではないかと思います。

弁護士 森田雅也の解説

そもそも、孤独死の原因が病気などの自然死である場合には、孤独死であるからといって、直ちに、亡くなった方の居住していた物件が心理的瑕疵のあるいわゆる事故物件とされるものではありません。

いただいたご相談をもとに判例の調査をしたところ、以下のような事例がありました。

「アパートの一室で賃借人が死亡し、死後1か月後に、隣人から異臭やうじ虫の発生について通報を受けた警察官らとともに賃貸人が室内に入ったことを契機として発見された事例において、心理的瑕疵が認められ、減額賃料分(1年間は賃貸不能、2年間は7万円を5万3000円に減額しないと賃貸不能)の賠償が認められた事例。」(東京地判平成29年2月10日)

この事案では、以下の事情があります。

  1. 1か月ご遺体が放置され、異臭やうじ虫が発生しており、近隣住民に嫌悪感をもたらした。
  2. 本件貸室には特殊清掃後もなお、同体液によるとみられる強い異臭が生じていた。
  3. 遺体発見から4か月が経過した後も居住物件として利用が困難な状態にあった。

上記事例とご質問いただいた事例を比較すると、長期間の放置とは言えず、遺体の腐乱による害虫の発生もなく、臭気もすぐに改善されたことなどから、一般人にとって嫌悪感・不快感が生じたとまでは言えず、心理的瑕疵にあたらない可能性も十分にあると思います。

よって、原状回復のための特殊清掃代の支払い義務は負うとしても、心理的瑕疵物件になったことに伴う賃料の減額分の賠償(逸失利益の賠償)までは義務がない可能性が高いのではないかと思います。

<解説>
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弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.7

2021年12月23日

Q:被相続人の相続財産である広大な山林の処分方法についてお伺いしたい。

相談の背景

相談者様は相続人の妻。被相続人の財産として広大な山林が残っており、固定資産税を毎年相続人である夫が支払っているとのこと。処分するのに費用がかかっても良いから、いち早く処分したい。不動産会社にて調査を行うも土地が広すぎて(42,444m)土地の特定ができず、売却価値の観点からも売却は難しいと言われてしまった。他に処分する方法はないのか。

A:市区町村への土地寄付制度の活用を検討しましょう。

弁護士 森田雅也の解説

市区町村の土地寄付制度を活用できる可能性があります。
実際に利用した制度の概要を以下にてご説明いたします。

【寄付制度の要件と手続きの流れ】

毎年2回の役場内の審議会にて寄付の可否が決定されます。
審議会開催の2か月程度前までに、下記の書類を記入し、受付してもらう必要があります。

  • 土地寄付希望調査書
  • 寄付希望相談確認事項

審議会後の流れですが可否の結果を役場の担当者から依頼者に対して文書で通知があり、
寄付が可能であれば、町役場の担当者が登記まで行って完了となります。

【土地の寄付までに依頼者側が行う事】

  • 相続の際は土地の名義を被相続人から依頼者本人に変更。
  • 依頼者本人の印鑑登録証明書の提出
  • 手数料、郵券などの実費のお支払
  • 抵当権が残っている際は抵当権の抹消登記

【寄付の審査で除外されてしまう土地の要件】

  • 土地に関して「管理費」の支払いが発生している土地
  • 登記地目が農地(田・畑)
  • 抵当権が残っている
  • 現況もしくは地目が墓地である
  • 防災上危険区域、隣接地に所有者が別途存在している土地
  • 実際に建物が建っている
  • 宅地や雑種地

管理コストの増加等のため宅地や雑種地などは、佐用町での事業での必要性がない限り受納の可能性は低くなっています。

以上が実際に利用した市区町村の土地寄付制度の概要となります。
土地寄付制度を活用できる可能性がありますので、不動産売却が難しい広大な土地の処分についてご相談があった際は、まずは役場に土地寄付制度があるかどうか確認してみてはいかがでしょうか。

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.6

2021年11月30日

Q:失踪宣告の申立て手続きと完了までの期間を教えてほしい。

相談の背景

被相続人は相談者の夫。夫の相続人は相談者のみだと思っていたが、義母と前夫との間に子供(夫の半血兄弟)がいることが判明。
当該子供の住民票を取得したこところ、住民登録が平成19年12月8日に抹消されており、住所を特定することができない。相続手続きを進めるにあたって失踪宣告の申立てを検討しており、手続きの流れとおおよその期間を伺いたい。

A:失踪宣告の申立てから審判まで、約1年間の手続きとなります。

弁護士の解説

住民登録が抹消されている平成19年12月8日を7年間の起算日として、失踪宣告の申立を行います。
失踪宣告の申立て手続きと完了までの期間は下記の通りです。

  1. 失踪宣告の申立て
    ↓2ヵ月程度
  2. 調査官による質疑応答
    ↓2週間程度
  3. 官報公告(3ヵ月)
    ↓4ヵ月程度
  4. 照会書の回答
    ↓1ヵ月半程度
  5. 審判
    ↓審判の確定証明書発行後10日以内
  6. 役所への届出

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