相談事例

相談事例vol.15

2022年05月31日

Q:空き家特例適用時の必要書類について知りたい。

相談の背景

被相続人は晩年独り身で、要介護認定を受けた後は亡くなるまで老人ホームに入所していた。被相続人の唯一の相続人である長男はアメリカに住んでいるので、相続した被相続人所有の土地建物を売却することとし、長男から遺産承継を受任した。

その際、譲渡所得税の申告を税理士に依頼しようと打診していたところ、空き家特例が適用できる可能性があったため、必要書類を揃えることになった。

A:ケースによって揃えなければならない書類は異なります。

弁護士 森田雅也と協力先税理士の解説

空き家特例とは、被相続人居住用家屋またはその敷地等を相続した相続人が、相続発生日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、当該家屋または当該家屋取壊し後の敷地を売却したときは、一定の要件を満たす場合にその譲渡所得の金額から最高3,000万円までを特別に控除することができる制度です。

さらに、平成31年度税制改正により、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった家屋であっても、次に掲げる要件その他一定の要件を満たす場合に限り、「相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていたもの」として本特例を適用できることとなりました。

  • 被相続人が老人ホーム等に入所をした時点において介護保険法に規定する要介護または要支援認定を受け、または介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当していた相続人、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと
  • 被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用(被相続人の物品の保管等)がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用またはその者以外の居住の用に供されていたことがないこと
  • 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること

今回のご相談の場合には、被相続人が要介護認定を受けていたことや、老人ホーム等に入所していたことを証明する書類も取り揃えなければなりません。

なお、既に建物を取壊して売却した場合には、その証明のための書類も必要となるので注意しましょう。

以上の内容を踏まえ、下記の書類が必要となります。

●基本的に必要な書類

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • 被相続人居住用家屋等確認申請書
  • ※この取得のために、以下の書類が必要です。
  • 被相続人と相続人の住民票の写し
  • 家屋及びその敷地の売買契約書の写し
  • 電気・ガス・水道いずれかの使用休止票(相続から譲渡までの間に中止されていること)
  • 介護保険の被保険者証等(要介護・要支援認定等を受けていたことの証明)
  • 売却後の登記簿謄本
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
  • 遺産分割協議書(相続人が一人の場合は戸籍一式を添付)

●家屋を既に取壊し、売却した場合に必要な書類

  • 家屋の閉鎖事項証明書
  • 建物解体前の写真(日付入りで、相続発生後に建物が存在していたことの証明)
  • 更地の写真

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.14

2022年04月28日

Q:相続放棄をした場合、生命保険の相続税非課税枠は適用されますか。

A:相続放棄をすると適用されません。

弁護士 森田雅也と協力先税理士の解説

結論からお伝えいたしますと相続放棄をした場合、生命保険の相続税非課税枠は適用されませんので注意が必要です。
ちなみに、提携先の士業事務所で実際にあった事例をご紹介いたします。

▼実際の事例

依頼者ら(長女、次女の2人姉妹)の父親(被相続人)が数千万円単位の財産を所有しているものの、多額の負債も負っているため、父親に関する生前対策の相談を受けた。

税理士によるアドバイスのもと、相続開始後は長女・二女が相続放棄を行うことを前提としつつ、生前のうちに相続時精算課税制度による長女・二女への贈与と生命保険の非課税枠を用いて将来の相続税の節税を図ろうとしていた。

税理士からの提案のとおり、父親は長女と二女に贈与を行い、かつ、生命保険に加入した。
その後、父親の相続が開始され、予定通り長女と二女は相続放棄の申述を行い受理された。生命保険の非課税枠により、相続時精算課税適用財産を考慮しても父親についての相続税申告は不要となる心づもりだった。

しかし、税理士による再確認により、「相続放棄を行ったことにより生命保険の非課税枠が適用除外」となることが判明。(相続税基本通達12-8 相続を放棄した者又は相続権を失った者が取得した保険金については、法第12条第1項第5号に掲げる保険金の非課税金額の規定の適用がないのであるから留意する。(昭46直審(資)6、昭57直資2-177改正))

結果的に生命保険金額と相続時精算課税適用財産が、長女と二女の相続税課税対象となり、相続放棄したにも関わらず相続税申告及び納付が必要になってしまった。
 
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.13

2022年04月28日

Q:遺言執行時の供託手続きについてお伺いしたい。

相談の背景

相談者は遺言執行者。遺言執行を受任していた遺言者がお亡くなりになり、執行が開始となった。
遺言書作成当時から推定相続人であった長女は、遺言者と音信不通で絶縁状態となっていたが、遺言者の意思により金融資産を受け取る内容で遺言者を作成していた。
ところが、遺言作成者から長女に対し、金融資産を受け取るための書類を送るも受け取ってもらえず、自宅訪問をするも対応してもらえず、受け取ってもらう術がなくなってしまった。そこで供託手続きを利用しようと思っているが、手続きの方法についてお伺いしたい。

A:供託手続きの流れや供託書の作成方法は下記の通りです。

弁護士 森田雅也の解説

供託とは、金銭、有価証券などを国家機関である供託所に提出してその管理を委ね最終的には供託所がその財産をある人に取得されることによって一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。

供託の種類によって定めが異なりますが、遺言執行のため相続人に金融資産を受け取らせたいが受け取ってもらえない場合は、弁済供託(民法494条)にあたりますので、今回は債務の履行地の法務局が管轄となります。そして、民法484条により、当該債務の履行地は債権者である相続人の住所地になるため、今回は長女の住所地である東京法務局での供託となります。

今回のケースでは、まず民法第494条を根拠規定として供託書を作成します。
第494条
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済を出来る者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。
弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

供託書を管轄法務局に提出後、審査のうえ「供託受理決定通知書」が供託者と被供託者双方に送られてきますので、供託者は、同封の振込依頼書によって供託金を指定口座へ送金し、供託書の正本を受け取り、供託が完了します。

<解説>
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弁護士 森田 雅也

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相談事例vol.12

2022年03月17日

Q:被相続人が生命保険契約を結んでいたかどうかを確認したい。

相談の背景

相談者の母が突然亡くなり、生命保険契約に関する手掛かりがなく保険金等の請求を行うことが出来ず、困っている。生命保険証券や、生命保険会社から定期的に送付される通知物、さらには、預金通帳の保険料の口座振替履歴等も確認したが、手掛かりになるものは見当たらなかった。
このような場合でも、生命保険契約を結んでいたのかどうか分かる方法はあるか。

A:生命保険契約照会制度を活用しましょう。

弁護士 森田雅也の解説

近年、孤独死、被保険者が認知症を患っている場合等、ご家族が生命保険契約の存在を把握していないケースが増えています。しかし、生命保険の保険金は、受取人が請求をしなければ受け取ることができません。

そのため、契約者が家族等に保険の加入状況を伝えていない場合、家族がどの保険会社へ請求をすればよいのか分からず、請求そのものができないといったケースが増加しています。

そこで、2021年7月より「一般社団法人 生命保険協会」を通じて、生命保険契約の手がかりがなくて困ったときのために、親族等が申し出れば、生命保険会社42社へ保険契約の有無を一括で照会できる「生命保険契約照会制度」が始まりました。

こちらの制度では、平時の死亡、認知判断能力の低下、または災害時の死亡もしくは行方不明によって生命保険契約に関する手掛かりを失い、保険金等の請求を行うことが困難な場合等において、生命保険契約の有無を確認することが出来ます。

<解説>
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相談事例vol.11

2022年03月17日

Q:限定承認の手続きの流れと実務上のポイントについてお伺いしたい。

相談の背景

被相続人は過去に商売をしていたため、遅延損害金含め約5,000万円の負債がある。
預貯金は数十万円ほど。相続人が暮らしている自宅に被相続人の名義が入っているため限定承認をして持分の買戻しを検討している。手続きの流れと実務上のポイントについて伺いたい。

A:限定承認の手続きの流れと実務上のポイントは下記の通りです。

弁護士 森田雅也の解説

限定承認の申立ての手続きと実務上の注意点を下記にてお伝えいたします。

  1. 限定承認の申立て
    相続を知ったときから3カ月以内(期間の伸長の手続あり)に、相続人全員でする必要があります。
    ↓ 約1ヵ月
  2. 官報公告・債権者への催告
    ↓ 約2ヵ月
  3. 鑑定人の選任申立て
    ↓ 約2ヵ月
    相続人には相続財産に対する先買権があり、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従った金額を支払うことで、競売にかかる前に相続財産を買い取ることができます(民法932条但書)。これを先買権といいます。被相続人持分を買戻す場合は、先買権を行使して持分の買戻しをしたい理由を明確に示したうえで、鑑定人の選任申立てをする必要があります。
    また、官報公告の費用等は経費として被相続人の財産より控除できますが、鑑定人による鑑定費用は相続人負担となりますので、注意が必要です。
  4. 鑑定額の入金・債権者に弁済する金額の計算
    ↓ 約1ヵ月
  5. 債権者への弁済
    ↓ 約1ヵ月
    弁済の手順は、民法では定められていませんが、以下の流れで行うことが一般的です。
    相続財産管理口座の内訳を債権者へ送付(不動産の鑑定書等の根拠資料も添付)→弁済額の計算書送付→内容証明で弁済額を提示→弁済
    ※債権者に対して明確に計算の根拠を示し、弁済額に異議がないことを確認した後に、払い出しが可能となります。
  6. 不動産登記
    相続人全員に法定相続割合での相続登記が必要です。その後、「民法932条 但書の価額弁済」を登記原因として、先売権を行使した相続人へ登記を行います。
    完了までの期間:約1年半

<解説>
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弁護士 森田 雅也

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