相談事例vol.31
2023年09月25日
Q:自己破産をした場合の相続財産の受け取り方について教えてほしい。
相談の背景
親族が亡くなり、相続が発生したが、相続人のなかに自己破産をした人がいるため、相続財産を受け取れるのかどうかを不安に感じている。自己破産をした相続人も相続財産を受け取れるのか、受け取れる場合の条件について教えてほしい。
A:自己破産をされた相続人が相続財産を受け取れるかどうかは、自己破産のタイミングによって異なります。
弁護士 森田雅也の解説
自己破産をする場合、自己破産により債権者に分配される財産は、破産手続きの開始時点で破産者が有していた財産に限定されます。つまり、自己破産をされた相続人が相続財産を受け取れるかどうかは、相続財産が破産した方の財産として扱われるかどうかによって決まります。
まず、破産手続きの申立て前に相続が発生していた場合、通常の相続人としての立場になるため、通常通りの遺産分割協議を進めることになります。取得した財産で自己破産を免れることができることが理想ですが、相続財産だけでは債権者への清算が出来ず、自己破産を選択しなければならない場合、相続財産は、破産管財人を通じて債権者へ分配されてしまいます。
次に、破産手続きの申立て後、破産手続き開始決定前に相続が発生していた場合、相続財産は、生活に最低限必要なものと99万円以下の現金を除き、全て破産管財人が管理・処分する権利をもつ「破産財団」に組み込まれます。
つまり、破産手続き開始決定前に相続が発生していた場合、相続することは可能ですが、それらの大半が破産財団に組み込まれ、破産管財人によって、債権者へ分配されてしまいます。
最後に、破産手続き開始決定後に相続が発生していた場合、相続財産は、「破産手続きの開始時点で破産者が有していた財産」としては扱われません。ゆえに、破産開始手続き決定後に得た財産は、破産手続きとは関係のない新たな財産として相続が可能です。
以上より、破産手続き開始決定後の相続発生においてのみ、破産者は相続財産をそのまま受け取ることができます。しかし、相続の発生するタイミングをコントロールすることはできません。自己破産を行う方はタイミングを慎重に検討し、必要に応じて、相続放棄を選択するなど、相続財産が相続人以外の方に受け取られてしまわないような対策が必要です。
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
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