相談事例vol.22
2022年09月07日
Q:配偶者居住権の消滅に関する課税関係についてお伺いしたい。
相談の背景
相談者は夫が既に死亡しており、配偶者居住権に基づいて自宅で暮らしていたが、無断で増築を行ったため、配偶者居住権を消滅させられてしまった。配偶者居住権の消滅によりどのような課税が発生するか知りたい。
A:消滅に際し、無償で消滅させた場合には居住建物の所有者に贈与税が、対価を受け取っている場合には配偶者(相談者)に譲渡所得税が課せられます。
無断増築により配偶者居住権を消滅させられた場合は、配偶者居住権が無償で消滅していることになりますので、居住建物の所有者に贈与税がかかることとなります。
弁護士 森田雅也の解説
配偶者居住権とは、被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者が、その居住建物につき、全部を無償で居住することのできる権利です。
配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者の死亡までとなりますが、遺産分割協議又は遺言書により期間を定めることも可能です。
配偶者居住権が配偶者の死亡又は存続期間の満了により消滅した場合は、民法の規定により予定通りに消滅するものにすぎず、相続又は贈与による経済的価値の移転は存在しないと考えられ、相続税又は贈与税は課税されません。
配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者の死亡までとなりますが、遺産分割協議又は遺言書により期間を定めることも可能です。
配偶者居住権が配偶者の死亡又は存続期間の満了により消滅した場合は、民法の規定により予定通りに消滅するものにすぎず、相続又は贈与による経済的価値の移転は存在しないと考えられ、相続税又は贈与税は課税されません。
一方で、配偶者居住権は存続期間満了前に消滅させることが可能です。配偶者が配偶者居住権を放棄したり(民法1035条1項)、配偶者と所有者の合意により配偶者居住権を解除することができるほか、配偶者が善良な管理者の注意をもって居住建物を私用収益しなかった場合や、無断で増改築した場合、無断で第三者に使用収益させた場合には、所有者は配偶者居住権を消滅させることができます(民法1032条4項)。
こうした場合、居住建物の所有者は、民法が予定していた期間よりも前に居住建物の使用・収益ができることになります。これにより、配偶者居住権の消滅を契機として、配偶者から居住建物の所有者にその建物を使用・収益する権利が移転して、完全な所有権が回復することになりますが、居住建物の所有者がこれに際し、対価を支払わなかった又は対価が廉価であった場合には、配偶者から居住建物の所有者への贈与があったものとされ、贈与税が課税されます。
また、配偶者居住権を、対価を受け取って消滅させた場合、その有償対価を得て消滅させる行為は資産の譲渡と同様の効果を持つとされ、配偶者に対して譲渡所得税が課税されます。
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
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