相談事例

相談事例vol.23

2022年10月13日

Q:被相続人の多額の負債を相続せずに被相続人名義の家屋に住み続ける方法はありますか?

相談の背景

被相続人の相続財産には多額の負債のほか、妻との共有名義である家屋も存在し、妻が現在も生活の拠点としている。被相続人の負債を負担するほどの余裕はないが、自宅不動産に住み続けたいと考えている。どのような方法があるか教えて欲しい。

A: 限定承認をすることで、自宅不動産に対する先買権を行使し、自宅不動産を購入することが可能です。

弁護士 森田雅也の解説

先買権とは、限定承認をした相続人に認められる権利で、相続した不動産が競売にかけられた場合に、その不動産を優先的に購入することができるものです。
限定承認の手続きは「限定承認の申立てと債権者への催告」、「不動産鑑定」、「債権者への弁済・名義変更」に大分されます。ここでは相続人が先買権を行使し、被相続人名義の家屋に住み続けるための「不動産鑑定」の段階でのポイントをお伝えします。
「不動産鑑定」の段階では、具体的には「鑑定人の選任申立」と「不動産鑑定額の入金」が必要となります。
「鑑定人の選任申立」においては、先買権を行使したい理由(今回の相談事例においては「相続財産たる家屋に住み続けたい」旨)を明確に示す必要があります。鑑定人については推薦することが可能ですが、官報公告や催告のための郵送料が経費として相続財産から控除可能なのに対し、鑑定費用は相続人負担となる点に注意が必要です。
不動産鑑定人が選任されると、具体的な不動産鑑定額の査定が始まりますが、この鑑定においては今回の相談事例のような建物のみの鑑定であっても「土地上の家屋」として評価がなされます。したがって、鑑定人による鑑定額が、固定資産税評価額と大幅に異なることもありえます。
さらに、不動産家屋に対する先買権の行使のためには、「不動産鑑定額の入金」の段階で、負債の精算のために鑑定額相当のキャッシュを用意する必要があります。上述のように、この鑑定額相当の金額は固定資産税評価額と大きく異なることもあるため、相続人が十分に準備できるのかが大切になります。
以上のように、不動産鑑定においては、その費用が相続人負担である点、鑑定額が固定資産税評価額とは異なり得る点に注意が必要です。
 
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
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