相談事例

相談事例vol.21

2022年09月07日

Q:信託契約終了に伴う受託者を帰属権利者とする登記について詳しくお伺いしたい

相談の背景

委託者の配偶者を受託者とする家族信託を組成した後、配偶者が亡くなり信託が終了した。信託財産に不動産が含まれていたため、信託契約で定めた帰属権利者に当該不動産を帰属させるための名義変更を行おうとしたところ、受託者個人を帰属権利者とする登記には、所有権移転登記による場合と、受託者の固有財産となった旨の変更登記による場合の2種類存在することがわかった。これらの違いを教えてほしい。

A:移転登記と変更登記では、登記権利者と登記義務者の構成が異なり、その対応は法務局によって異なります。

弁護士 森田雅也の解説

家族信託が終了した場合、清算受託者による手続きを経たうえで、残余財産が信託行為において指定された帰属権利者に帰属します。
信託が終了し、当該信託財産に不動産が含まれる場合には、受託者から帰属権利者への所有権移転登記及び信託抹消登記を申請しなければなりません。

このとき、信託終了時の帰属権利者を受託者個人として定めている場合には、信託財産に属する不動産が受託者個人の固有財産に帰属することとなります。
この場合の登記手続きには、所有権移転及び信託抹消登記による方法と、受託者の固有財産となった旨の変更及び信託抹消登記による方法がありますが、現時点では法務局ごとに運用が異なり、見解も分かれている状況です。

所有権移転及び信託抹消登記による場合は、登記簿上の所有者が受託者になることから、実質受託者が「登記権利者」兼「登記義務者」となり、単独で申請が可能です。
一方で、変更及び信託抹消登記による場合は、権利の変更登記にあたることから、受託者が「登記権利者」、受益者が「登記義務者」として共同申請するという特例が適用されています。そのため、受益者死亡のような本事例では、誰が登記義務者になるのかが問題です。

この点につき、受託者個人が「登記権利者」、受益者相続人が「登記義務者」となるとする法務局もあれば、「帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。」との信託法上の規定から受託者個人が「登記権利者」兼「登記義務者」となるとする法務局も存在します。
いずれにしろ、受託者個人を帰属権利者とする場合の登記手続きについては明確な方針が存在しないため、実際に登記申請を行う場合には、法務局への確認が必要です。

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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