相談事例vol.18
2022年06月30日
Q:受益者連続型信託における受益者の変更にはどのような手続きが必要ですか?
相談の背景
被相続人には財産管理が困難な高齢の配偶者と、子どもが一人おり、自分の死後の配偶者の生活費等や子の将来的な費用への不安から、受託者を信託銀行とし、委託者及び第一受益者を被相続人自身、第二受益者を配偶者、第三受益者を子とする受益者連続型信託契約を締結していた。被相続人は令和2年に亡くなり、その後、配偶者も亡くなった。受益者を子に変更するために必要な手続きを教えてほしい。
A:相続人に日本国籍喪失者がいる場合の遺産分割協議書の作成は下記の通りです。
弁護士 森田雅也の解説
「受益者連続型信託(跡継ぎ遺贈型受益者連続型信託)」とは、信託契約の一種であり、現受益者に帰属している信託受益権が、当該受益者の死亡を契機として、指定された受益者に順次承継される旨の定めのある信託です。遺言とは異なり、自身の財産の承継先を複数先の世代まで決めておくことのできる制度であり、本人亡き後の高齢配偶者や子の財産管理などへのニーズから活用されています。
受益者の変更に際し、信託財産に不動産がある場合には、信託目録に記載した登記事項の変更があったといえるため、信託目録の委託者及び受益者の変更登記手続きが必要です。(不動産の名義は受託者のままなので、不動産の名義変更は不要です。)
受益者の変更登記は、「委託者の死亡又は相続」を原因として、受託者の単独申請により登記することができます。このとき、登録免許税として、不動産の個数毎に1,000円が課せられます。不動産取得税は課税されません。
このとき、登記原因については、信託契約条項を「受益権相続」で定めた場合は「相続」に、「前受益者の受益権を消滅させ、次順位受益者が新たに取得する」と定めた場合には「死亡」となります。
この受益者連続型信託は便利な反面、制約も存在します。特に相続税については注意が必要です。
受益者連続型信託により財産を取得した者は、遺贈により財産を取得した者とみなされ相続税が課税されます。この相続税申請は、相続税申告期限である「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」ではなく、「前受益者が死亡した日の翌月末」までに特別の書類(「信託に関する受益者別調書」「信託に関する受益者別調書合計表」など)を提出することによってしなければなりません。
その他受益者連続型信託は信託期間に30年の制限が課せられるなど、万能な制度ではありません。受益者連続型信託を行う際には十分な検討が必要です。
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
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