相談事例

相談事例vol.11

2022年03月17日

Q:限定承認の手続きの流れと実務上のポイントについてお伺いしたい。

相談の背景

被相続人は過去に商売をしていたため、遅延損害金含め約5,000万円の負債がある。
預貯金は数十万円ほど。相続人が暮らしている自宅に被相続人の名義が入っているため限定承認をして持分の買戻しを検討している。手続きの流れと実務上のポイントについて伺いたい。

A:限定承認の手続きの流れと実務上のポイントは下記の通りです。

弁護士 森田雅也の解説

限定承認の申立ての手続きと実務上の注意点を下記にてお伝えいたします。

  1. 限定承認の申立て
    相続を知ったときから3カ月以内(期間の伸長の手続あり)に、相続人全員でする必要があります。
    ↓ 約1ヵ月
  2. 官報公告・債権者への催告
    ↓ 約2ヵ月
  3. 鑑定人の選任申立て
    ↓ 約2ヵ月
    相続人には相続財産に対する先買権があり、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従った金額を支払うことで、競売にかかる前に相続財産を買い取ることができます(民法932条但書)。これを先買権といいます。被相続人持分を買戻す場合は、先買権を行使して持分の買戻しをしたい理由を明確に示したうえで、鑑定人の選任申立てをする必要があります。
    また、官報公告の費用等は経費として被相続人の財産より控除できますが、鑑定人による鑑定費用は相続人負担となりますので、注意が必要です。
  4. 鑑定額の入金・債権者に弁済する金額の計算
    ↓ 約1ヵ月
  5. 債権者への弁済
    ↓ 約1ヵ月
    弁済の手順は、民法では定められていませんが、以下の流れで行うことが一般的です。
    相続財産管理口座の内訳を債権者へ送付(不動産の鑑定書等の根拠資料も添付)→弁済額の計算書送付→内容証明で弁済額を提示→弁済
    ※債権者に対して明確に計算の根拠を示し、弁済額に異議がないことを確認した後に、払い出しが可能となります。
  6. 不動産登記
    相続人全員に法定相続割合での相続登記が必要です。その後、「民法932条 但書の価額弁済」を登記原因として、先売権を行使した相続人へ登記を行います。
    完了までの期間:約1年半

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也

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