相談事例vol.17
2022年06月30日
Q:相続人が外国籍に帰化している場合の遺産分割協議書の作成についてお伺いしたい。
相談の背景
相続登記に際し、遺言書が無く、遺産分割協議書の作成が必要だが、相続人の一人がアメリカ人国籍を取得して現地で暮らしており、その方の印鑑証明書を取得することができない。
このような場合の遺産分割協議書の作成について伺いたい。
A:相続人に日本国籍喪失者がいる場合の遺産分割協議書の作成は下記の通りです。
弁護士 森田雅也の解説
通常、遺産分割協議書には、協議に参加した相続人の承諾の証として、相続人全員の署名と実印での捺印が必要になります。
しかし、海外在住の日本国籍喪失者は日本の市役所等では印鑑登録ができないため、「実印」を持ちません。また、海外の日本大使館や領事館が発行する「署名証明」や「在留証明」も日本国籍者を対象とするため、原則として利用できません。
このような外国籍の方の相続手続きを、「元日本人であることが証明できない場合」と「元日本人であることを証明できる場合」に分けてご説明します。
〇元日本人であることが証明できない場合
基本的には居住国の公証人が作成した「サイン証明書」と、本人の陳述内容を公証人が認証したことを示す「宣誓供述書」が必要となります。元日本人であることが証明できない場合、日本大使館や領事館で手続することはできません。
〇元日本人であることを証明できる場合
日本国籍を離脱した記載のある除籍謄本原本などによって元日本人であることが証明できる場合、特例として、「署名証明」と、日本国籍時の漢字氏名や生年月日、現国籍、旧本籍地や現住所等が記載された「居住証明」を日本大使館又は領事館で取得することができます。これらを署名した遺産分割協議書に添付して送付することで遺産分割協議書が完成します。
相続人が全員日本国籍である場合と比べると手間はかかりますが、遺産分割協議書の作成は可能であり、被相続人が日本人である場合には、日本と同様の相続手続きが可能です。
<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
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