相談事例

相談事例vol.30

2023年09月25日

Q:戸籍上の高齢者消除の扱いについて教えてほしい。

相談の背景

相続の相談を受任し、相続人を明らかにするために戸籍謄本を取得したところ、相続人と思われる方の身分事項欄に「高齢者消除」の文言が見られた。高齢者消除がなされている場合、その方についても相続が発生しているのでしょうか。

A:高齢者消除は行政上の措置に過ぎないので、相続は開始しません。

弁護士 森田雅也の解説

「高齢者消除」とは、100歳以上の高齢者のうち、所在不明で亡くなっている可能性が高いと推測される高齢者について、市区町村の長が、管轄法務局長の許可を得て、職権で戸籍から消除することが認められる制度です。高齢者消除は、戸籍整理のための行政上の措置にすぎませんので、法律上の効果が生じる制度ではありません。ゆえに、相続も発生しません。
高齢者消除が適用されている方について、相続手続きを開始させるためには、親族から死亡届が出されるか、家庭裁判所での失踪宣告の手続きを経る必要があります。
死亡届は親族等からしか提出ができませんので、死亡届の提出が難しい場合には、失踪宣告の手続きを行います。
失踪宣告が受理された場合、高齢者消除の有無やその許可日に関わらず、7年の失踪期間満了時(特別失踪の場合は「危難が去ったとき」)に死亡したものとみなされます。
その後、失踪宣告の審判確定から10日以内に、申立人が不在者の本籍地または申立人の住所地の市区町村に、失踪宣告審判書と、確定証明書を添付した「失踪届」を提出する必要があります。この失踪届が受理されることで、戸籍に死亡したものとして記載がなされます。

<解説>
弁護士法人Authense法律事務所
弁護士 森田 雅也
相続遺言実務家研究会では、会員様を対象に無料法律相談窓口を設置しております。
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相談事例vol.29

2023年04月27日

Q: 親や家族が亡くなった後や認知機能が低下したときに、生命保険の契約先が分からない場合はどうしたらよいか。

相談の背景

親が亡くなってしまった。生命保険に加入していたようだが、どの保険会社に加入していたのかを聞いていなかったため、生命保険の保険金を請求することができずに困っている。
生命保険契約を確認するための保険証券や保険会社からの郵便物、預金通帳の保険料の口座振替履歴等を探しても見つからない場合は、保険金を請求できないのか。

A:「生命保険契約照会制度」を利用することで契約の有無を確認することができます。

弁護士 森田雅也の解説

生命保険契約紹介制度とは、一般社団法人生命保険協会が窓口になり親族等に代わり、一般社団法人生命保険協会に加入している生命保険会社(現在42社)へ保険契約の有無を一括で照会できる制度です。これまでは、一社一社個人で確認しなければなりませんでしたが、令和3年(2021年)7月からこの制度が利用できるようになりました。
下記3つの状態いずれかに該当する場合、この制度を利用できます。

  1. 平時において死亡した
  2. 平時において認知判断能力が低下した
  3. 災害で死亡または行方不明となった

平時において死亡または認知判断能力が低下した場合は、照会1件につき3,000円(税込)にて、オンラインまたは郵送で申し込み手続きができます。郵送の場合、手続きの流れは下記のとおりです。
① 申し込み依頼

② 生命保険協会から申請用紙等が到着(申請日から3~4営業日)

③ 申請用紙や必要書類の返送

④ 支払伝票にて手数料支払い(書類提出から約2週間後)

⑤ 回答書の到着(手数料支払い後約2~3週間後)
申し込み依頼から回答書が届くまでには、1ヵ月半程度かかる見通しです。
オンラインの場合は、①契約照会システムへのユーザー登録、②「生命保険契約照会 同意書」等のダウンロード、③「生命保険契約照会 同意書」等の作成・準備・提出、④「生命保険契約照会 同意書」等の提出/不備対応、⑤制度利用料(3,000 円)の支払い(クレジットカード又はコンビニエンスストア支払い)⑥契約照会結果の受取り(手続の終了)となります。
災害で死亡または行方不明となった場合については、専用ダイヤルに直接問い合わせる必要があります(利用料はかかりません)。
詳細は、生命保険協会ホームページをご覧ください。


<解説>
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弁護士 森田 雅也
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相談事例vol.28

2023年04月27日

Q:行政書士が財産管理業務を行うことはできるのか。

相談の背景

司法書士・弁護士は財産管理業務を業として行えることが司法書士法・弁護士法等に明記されていますが、行政書士は行政書士法に明記されていません。
行政書士は財産管理業務を行う事はできないのでしょうか。

A:行政書士も財産管理業務を行うことができるとされました。

弁護士 森田雅也の解説

令和5年3月13日、総務省自治行政局行政課長より各都道府県行政書士担当部(局)長、全国銀行協会事務・決済システム部長、及び、第二地方銀行協会業務部長に対し「行政書士が業として財産管理業務及び成年後見人等業務を行うことについて」の通知が出されました。
これまで、行政書士が財産管理業務を行うことについて金融機関、裁判所等の関係各所の判断が分かれており、行政書士業務が一部止まってしまうことが散見されていました。
しかし、総務省の上記通知によって、行政書士が財産管理業務を行えることが公に認められました。
今後、司法書士が行っていた遺産承継業務や遺言執行業務等を行政書士が行える可能性もあるため、引き続き注目しておくことが重要となります。

<解説>
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相談事例vol.27

2022年12月13日

Q:生前の被相続人との土地の使用貸借関係に基づいて、被相続人の死後、借主に対して、土地の法定相続分に基づく地代を請求することは可能ですか?

相談の背景

被相続人名義の土地の上に、被相続人の長男の自宅が存在しているが、被相続人の生前、長男は被相続人に対して地代を支払っておらず、使用貸借関係にあった。相続の発生により、長男と同じく相続人である二男は、当該土地を売却し、法定相続分に基づいて売却代金を相続する旨を主張した。しかし、長男が今すぐには土地を売却することが難しいことを伝えると、二男は、長男に対して地代の支払いを請求してきた。長男は二男に対し、地代を支払うべきか。

A:使用貸借契約は終了しないため、長男は地代を支払う必要はありません。

弁護士 森田雅也の解説

使用貸借契約は、貸主と借主の個人的な信頼関係に基づいて設定される、目的物を無償で使用・収益できる権利です。個人的な信頼関係に基づく契約ですので、借主の死亡によって契約は終了しますが、貸主が死亡しても、契約関係は終了せず、貸主たる地位及びそれに付随する借主に無償で使用・収益させる義務が相続人に承継されます。
したがって、被相続人が死亡した段階では、使用賃借契約は終了せず、相続人たる長男及び二男に貸主たる地位が承継されるため、長男は地代を支払う必要がありません。
今回の相談事例において地代の支払い義務が生じるとすれば、遺産分割協議の結果、当該土地の所有権が二男に帰属した場合でしょう。被相続人と長男との間の使用貸借契約は、「使用貸借の期間及び使用収益の定めがない」使用貸借契約である可能性があり、このような使用貸借契約は、貸主が解約申入れをした時点で終了させることができます(民法598条2項)。したがって、所有権の二男への帰属により、「使用貸借の期間および使用収益の目的についての定めがない」ことをもって、二男は長男との使用貸借契約を解除し、賃貸借契約の締結を申し入れることができるようになります。もっとも、当該契約が真に「使用貸借の期間及び使用収益の定めがない」使用貸借契約であるかについては争われることが多く、実際は暗黙のうちに期限または目的を定めたと認定されることが多いので、その点には注意が必要です。
なお、遺産分割協議の成立をもって、当該土地の所有権が二男に確定的に帰属するため、所有権が二男にあるからといって、長男が遡及的に地代の支払い義務を負うわけではありません。

<解説>
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相談事例vol.26

2022年12月13日

Q:海外に在住している相続人の所在はどうすれば分かりますか?

相談の背景

相続人調査の過程でアメリカに在住している相続人が判明したが、住民票や戸籍の附票には国名しか記載されておらず、その所在が分からない。このような在外相続人の所在調査について伺いたい。

A:親族や友人・知人への聴き取りのほか、外務省による「所在調査」や国籍喪失届・婚姻届の記載からの調査が考えられます。

弁護士 森田雅也の解説

相続人の所在調査は、住民票や戸籍の附票に記載された住所から調査することが一般的ですが、海外在住者については住民票等への住所の記載が義務付けられておらず、国名だけの記載に留まるところも少なくありません。さらには住民票等の文書保存期間は令和元年6月までは5年間であったことから、それ以前のものについては、国名すら把握できないということも起こり得ます。
このような場合、親族や友人・知人への聞き取りを広く行うことでその所在が分かることもありますが、そうではない場合、方法としては外務省による「所在調査」を利用することができます。海外に在留している日本人について、その在留国又は地域が判明している場合、在外公館が保有する資料から、当該日本人の住所・連絡先を調査することが可能です。
しかしながら、外務省による所在調査の依頼は、三等親以内の親族のほかは、裁判所や官公署、弁護士会からしかすることができないほか、そもそも所在地域が不明・外国籍に帰化しているなどの場合にはその依頼すらすることができませんので注意が必要です。
以上のような方法をもってしても、その所在を明らかにすることができなかった場合には、日本人の所在が明らかにできない場合と同様に、失踪宣告や不在者財産管理人の選任申立を検討することになるでしょう。

<解説>
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